こんにちは、「MAC&Linuxサポート」の運営者です。古いパソコンをなんとか再利用できないかと思って「linux32bit」と検索してみたら、思ったより情報が複雑で戸惑っていませんか?
2025年現在、32bit版のLinuxを探す理由は人によって大きく二つに分かれている気がします。一つは、古いPCを復活させるための軽量なOSを探しているケース。もう一つは、最新の64bit PCで、Steamなどの32bitアプリを動かすための互換性の問題、つまり64bit上で32bitアプリを実行する方法を探しているケースですね。
どのディストリビューションを選ぶべきか、おすすめは何か、isoファイルはどこにあるのか。そして、DebianやUbuntu、Fedoraといった主要なディストリビューションのサポート終了がどうなっているのか。特にWebブラウザがいつまで使えるのかは、死活問題かなと思います。
この記事では、そんな「linux32bit」に関する二つの大きな疑問、「古いPCの延命」と「64bitでの互換性」について、2025年11月現在の状況を私の視点で整理してみました。
- 32bit PCを延命させる現役ディストリビューション
- OSとブラウザ、それぞれのサポート期限
- 64bit LinuxでSteamが動く仕組み
- 32bitハードウェアの現実的な活用法
linux32bitで古いPCを延命

まず、古い32bitハードウェア(i386やi686といったCPUですね)を、もう一度デスクトップPCとして蘇らせたい!というテーマから見ていきましょう。2025年の今、この選択肢はかなり絞られてきているのが現状です。
軽量なおすすめディストリビューション
昔はUbuntuやFedoraにも32bit版があったんですが、残念ながら数年前に(Ubuntuは2019年、Fedoraも2019年)32bitのデスクトップイメージの提供を終了してしまいました。
じゃあ何があるのかというと、2025年現在、私たちの強い味方になってくれているのが「Debian 12 “Bookworm”」です。そして、そのDebian 12をベースにして、古いPCでもサクサク動くように徹底的に軽量化してくれたディストリビューションが、実質的な選択肢になってくるかなと思います。
具体的には、以下の2つが特に有力ですね。
- antiX (アンティックス)
- MX Linux (エムエックス リナックス)
他にもDebian 12ベースのPuppy Linux (BookwormPup32) や SparkyLinux 7 などもありますが、使いやすさやコミュニティの活発さで、まずはこの2つを検討するのが良いかなと思います。
32bit版isoの入手先は?
isoファイル(インストール用のイメージファイル)は、それぞれの公式サイトからダウンロードできます。
antiXは、公式サイトのダウンロードページで「antiX-23」シリーズを探します。32bit版はファイル名に「i686」や「386」と入っているものですね。種類がいくつかありますが、迷ったら「full」版を選ぶのが一般的です。
MX Linuxも同様に、公式サイトのダウンロードページで「MX-23 “Libretto”」を探します。「32 bit」という表記が分かりやすくあるので、こちらをダウンロードします。
PAEって何?
MX Linux 23の32bit版isoには「i686 PAE」という表記があるかもしれません。これは、すごくざっくり言うと、32bit OSでも4GB以上のメモリを(ちょっと工夫して)認識させるための技術です。ただ、古い32bit PCだとメモリが1GBや2GBのことも多いので、この表記は「比較的新しいめの32bit CPU(Pentium Mとか)が必要かも」くらいに思っておくと良いかもしれません。antiXはPAE非対応の古いCPU(Pentium IIIなど)もサポートしているのがすごいところです。
antiXとMX Linuxを選ぶ理由
この2つをおすすめするのには、ちゃんと理由があります。
antiX 23: とにかく最軽量
antiXの最大の魅力は、その圧倒的な軽さです。公式サイトには「Pentium III 256MB RAM」でも動作すると書かれています。これは驚異的ですよね。
軽い秘密の一つは、最近のLinuxで主流の「systemd」を使っていないこと(systemd-free)。これにより、システム起動時のリソース消費を極限まで抑えています。デスクトップ環境もIceWMやFluxboxといった超軽量なものが使われていて、まさに「2000年代初頭のマシンを蘇生させる」ための最終兵器、という感じです。
MX Linux 23: 軽量さと機能性のバランス
antiXと共同開発されている兄弟ディストリビューションですが、こちらは「軽量だけど、現代的な使いやすさも欲しい」というニーズに応えてくれます。
デフォルトのデスクトップ環境は「XFCE」を採用しており、antiXのIceWMなどと比べると格段に高機能で、見た目も私たちが「今どきのPC」としてイメージするものに近いです。それでも動作は非常に軽く、推奨RAMは1GBとされています。2000年代後半のネットブックやラップトップなら、こちらの方が快適かもしれませんね。
Debian 12のサポート終了はいつ?
さて、これらのディストリビューションの「土台」となっているDebian 12 “Bookworm” ですが、サポート期限がとても重要です。
Debian 12は2023年6月にリリースされ、標準サポートは2026年6月までです。しかし、その後は「LTS (Long Term Support)」チームが引き継ぎ、リリースから5年間、つまり2028年6月30日までセキュリティアップデートが提供される予定です。
Debian 12 (i386) のサポート期限
セキュリティサポート終了: 2028年6月30日 (予定)
antiX 23やMX Linux 23も、このDebian 12のLTSに準拠する形でサポートが継続されると見込まれます。OSの基盤としては、2028年まで安全に使える可能性がある、ということです。
2025年以降も使えるOSは?
「じゃあ2028年まで安泰!」と思いたいところですが、一つ大きな落とし穴があります。それは、Debianの「次」のバージョンです。
2025年8月に、次期メジャーバージョンであるDebian 13 “Trixie”がリリースされました。そして、このDebian 13で、ついに32bit PC (i386) 向けの公式インストーラーの提供が廃止されてしまったんです。
これは、Debian 12が「32bitハードウェアに新規インストールできる最後のDebian」になったことを意味します。
この影響は絶大で、Debian 13ベースに移行する他のディストリビューション(LMDE 7やSparkyLinux 8、そして次期MX Linux 25)も、軒並み32bit版のISOイメージ提供を廃止・または廃止予定と発表しています。
結論: 最後の砦は「Debian 12」ベース
2025年11月現在、32bitハードウェアを延命させたい場合、実用的な選択肢は「Debian 12ベースのディストリビューション(antiX 23やMX Linux 23)」一択であり、これが「最後の世代」となる可能性が極めて高いです。
Webブラウザのサポート状況
OSが2028年までサポートされるとしても、もっと深刻な問題があります。それが「Webブラウザ」です。
古いPCをデスクトップとして使うなら、インターネット閲覧は必須ですよね。しかし、現代のWebサイトは非常にリソースを食うため、ブラウザの開発も64bitが主流です。
- Google Chrome: 2016年に32bit Linuxのサポートを終了済み。
- Mozilla Firefox: これまで32bitをサポートし続けてくれた最後の希望でした。
しかし、そのFirefoxも、ついに32bit Linux (x86) サポートの終了を2025年9月に発表しました。
タイムラインは以下の通りです。
- Firefox バージョン 145 (2026年予定): 64bit専用となる最初のリリース。
- Firefox ESR 140 (延長サポート版): 32bitユーザーに残された最後の公式版。
そして、このFirefox ESR 140のセキュリティサポートは、2026年9月に終了する予定です。
これは、OSのサポート期限(2028年6月)よりも約2年も早く、安全に使えるWebブラウザが失われることを意味します。これが32bitデスクトップの「実用的な死」かもしれませんね。
64bitとlinux32bit互換問題

さて、ここからは「linux32bit」という言葉のもう一つの側面、つまり「最新の64bit PC」における互換性の問題です。特にLinuxでゲームをしたい人にとっては、非常に重要な話ですね。
64bitで32bitアプリを実行
最新の64bit Linux (x86_64) を使っていても、古いLinuxアプリや、Windows用のゲーム(WineやProton経由)など、32bit (i386) でしか作られていないソフトウェアを実行したい場合があります。
これを実現するために、ほとんどの64bitディストリビューションは「multilib (マルチリブ)」という仕組みを提供しています。これは、64bitのOSの中に、32bitのアプリを動かすためだけに必要な「32bit版の基本的なライブラリ(部品群)」を一緒に入れておく仕組みです。
Debian 13 “Trixie” がi386インストーラーを廃止した一方で、i386パッケージ(ライブラリ)自体は残しているのは、まさにこのmultilibのためなんですね。
Steamとmultilibの関係
このmultilibがなぜこんなに重要視されるのか。その理由は、ほぼ一点に集約されます。
Linux版のSteamクライアント自体が、2025年現在もなお32bitアプリケーションである、という事実です。
「え、Steamで動くゲームは64bitが主流なのに?」と思うかもですが、そのゲームを起動・管理する「Steamクライアント」本体が32bitなんですね。
もしOSからmultilib(32bit互換ライブラリ)が削除されてしまうと…
- 32bitのSteamクライアントが起動しなくなる。
- Steamが起動しないので、ゲームライブラリにアクセスできない。
- Proton (Wine) もSteam経由で動くため、機能しない。
- 結果、32bitゲームだけでなく、64bitのWindowsゲームも含め、Steam上の全ゲームが動作不能になる。
…という、Linuxゲーマーにとっては悪夢のような連鎖が起きてしまうわけです。
Wine WoW64 との混同に注意
「Wine 9.0以降のWoW64 (Windows-on-Windows64) があればmultilibは不要」という話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、これは「32bitのWindowsアプリ」をmultilibなしで動かす技術です。32bitのLinuxアプリである「Steamクライアント本体」の問題は解決してくれないのが、ややこしいところです。
FedoraやUbuntuの動向
この「multilibを維持するコスト」は、ディストリビューションの開発者にとって大きな負担になっています。もうサポートが切れた32bitコードを、ボランティアで修正し続けないといけないからです。
2019年にはUbuntu (Canonical) がmultilibの廃止を提案して、Steamを運営するValve社も巻き込んで大騒動になり、結局撤回しました。
そして2025年6月、今度はFedoraが次期バージョン(Fedora 44)でmultilibサポートを完全に削除する提案を出しました。当然、Linuxゲーミングコミュニティから(私も含め)激しい反発があり、この提案も最終的には撤回されました。
ひとまずは危機を回避しましたが、根本的な問題(Steamクライアントが32bitであること)が解決しない限り、この「時限爆弾」は残り続けることになります。Valveにはぜひ64bit版のクライアントをリリースしてほしいですね…
サーバーとしての活用法
では、話を「古い32bitハードウェア」に戻しましょう。
Webブラウザが2026年9月にサポート終了してしまうなら、デスクトップとしての利用は厳しい。じゃあ、ゴミ箱行きかというと、そんなことはありません。
私がいま最も合理的だと考えている活用法が、「ヘッドレス・ネットワークサーバー」です。
ヘッドレス、つまりGUI(デスクトップ画面)を一切使わず、CUI(黒い画面、コマンド)だけで動作させるサーバーですね。これには素晴らしい利点があります。
- ブラウザ不要: Webブラウザを使わないので、2026年9月のサポート終了問題を完全に回避できます。
- LTSをフル活用: OSのセキュリティサポート期限である2028年6月30日まで、安全に使い切ることが可能です。
- 低リソースに最適: Pi-hole(広告ブロッカー)などはRAM 512MBもあれば十分動作します。
具体的な用途としては、
- Pi-hole (広告ブロッカー): 自宅ネットワーク全体の広告をブロックできます。
- ファイルサーバー (Samba): 古いPCの内蔵ストレージをNASのように使えます。
- プリントサーバー (CUPS): USBプリンターをネットワーク共有できます。
こうした用途なら、Debian 12 “Bookworm” のMinimalCLI(最小構成)や antiX Core をインストールすれば、非力な32bitマシンでも十分に活躍できる道が残されています。
linux32bitの未来とまとめ

ここまで、「linux32bit」というキーワードが持つ二つの側面を見てきました。
一つは「ハードウェアの延命(パス1)」です。
これはDebian 12という最後の砦によって、タイムラインが明確に示されました。
32bitハードウェアの「余命」
- デスクトップとしての死: 2026年9月 (Firefox ESRサポート終了)
- サーバーとしての死: 2028年6月 (Debian 12 LTSサポート終了)
2025年11月現在、古い32bit PCをe-waste(電子廃棄物)にせず、最後まで使い切りたいなら、「ヘッドレス・ネットワークサーバー」として2028年まで活用するのが、最も現実的で安全な選択肢だと私は思います。
もう一つは「64bitの互換性(パス2)」です。
こちらはFedoraの提案が撤回され、当面は安泰です。しかし、Steamクライアントが32bitである限り、数年おきに再燃する技術的な負債であり続けるでしょうね。
ご自身の「linux32bit」がどちらの問題なのかを切り分けて、この記事が最適な選択をするための一助になれば幸いです。
免責事項
この記事で紹介したディストリビューションのサポート期限や機能は、2025年11月時点の調査に基づいています。各プロジェクトの方針変更により、将来的に変更される可能性があります。インストールの際は、各ディストリビューションの公式サイトで最新のリリースノートやドキュメントを必ず確認してください。最終的な判断と実行は、ご自身の責任においてお願いします。

