2025年のWindows 10サポート終了に向けて、まずは「ESU(拡張セキュリティ更新プログラム)」がどのようなものなのか、その基本的な部分からお話ししていきますね。特に法人で利用する場合、個人向けとはルールが異なる部分が多いので、基礎知識をしっかり押さえておくことが大切です。

延長サポートの期限はいつまでか
まず一番気になる「いつまで延長できるの?」という点ですが、Windows 10の法人向けESUは、最長で3年間、つまり2028年10月まで提供される予定です。
2025年10月14日に通常のサポートが終わった後、1年ごとにライセンスを更新していく形になります。ただ、これは「3年間は安心」というわけではなく、あくまでWindows 11へ移行するまでの時間稼ぎ、言わば一時的な防波堤だと考えてもらうのが良いかと思います。
・1年目:2025年10月〜2026年10月13日
・2年目:2026年10月〜2027年10月12日
・3年目:2027年10月〜2028年10月
また、このESUを利用するためには、PCが「Windows 10 バージョン 22H2」になっていることが大前提です。まだアップデートしていないPCがある場合は、早めに対応しておく必要がありますね。
セキュリティ更新プログラムの仕組み
ESUを入れたら今までと同じようにWindows 10が使えると思われがちですが、実は提供される内容がかなり限定的です。ESUで配信されるのは、マイクロソフトが「緊急(Critical)」や「重要(Important)」と判断したセキュリティパッチのみなんです。
つまり、新しい機能が追加されたり、ちょっとしたバグ(不具合)が修正されたりすることは一切ありません。また、「ここがおかしいから直してほしい」といった設計変更のお願いもできなくなります。テクニカルサポートも原則として付かなくなるため、本当に「重大なセキュリティの穴だけを塞ぐ」ためのプログラムだという認識が必要です。
・新機能の追加
・セキュリティ以外の不具合修正
・無償のテクニカルサポート
気になるライセンス価格と料金体系
経営層も気にするコストのお話です。法人向けESUの価格は、デバイス(PC)1台ごとに課金される仕組みなんですが、最大の特徴は「1年ごとに価格が倍増(ダブルアップ)」していく点です。
マイクロソフトが公開している標準的な価格(目安)としては、以下のようになります。
| 提供年度 | 標準価格(1台/年額) |
|---|---|
| 1年目 | $61 |
| 2年目 | $122 |
| 3年目 | $244 |
日本円での正確な価格は為替レートや購入先によって変動しますが、例えば3年間フルで利用した場合、1台あたりの総コストは$427(約6〜7万円)にもなってしまいます。台数が多い企業にとっては、かなりの出費ですよね。
Microsoft Intuneなどを利用してクラウドで管理しているデバイス(Cloud Managed)には約25%の割引が適用されたり、教育機関向けには大幅な特別価格が用意されていたりもします。また、Windows 365などの仮想デスクトップ環境でWindows 10を利用する場合は、ESUが追加費用なしで適用されるケースもあります。
累積課金ルールの落とし穴に注意
法人向けESUの料金体系で、絶対に知っておくべき怖いルールがあります。それが「累積課金(Cumulative)の原則」です。
これはどういうことかと言うと、「1年目はなんとか自力で対策して、2年目からESUに入ろう」と思った場合、2年目の料金だけでなく、スキップした1年目の料金も遡って支払わなければならないんです。つまり、2年目からの加入でも「$122(2年目)+$61(1年目)=$183」が必要になります。
また、「あと半年で移行が終わるから半年分だけ買いたい」といった月割や日割りの契約もできません。常に年単位での一括購入となるため、移行計画が遅れれば遅れるほど、想定外のコストがのしかかってくる仕組みになっています。
代理店やcsp経由での購入方法
法人向けESUは、個人のようにWindowsの設定画面からクレジットカードでサクッと買うことはできません。基本的には、企業向けのライセンスプログラムを通じて購入することになります。
主に2つの買い方があります。
- ボリュームライセンス(EAなど):大企業向け。一定数以上のまとめ買いが基本です。
- CSP(Cloud Solution Provider)プログラム:中小企業向け。1ライセンスから柔軟に購入でき、代理店がサポートしてくれます。
多くの中小企業はCSP経由で購入することになるかと思います。代理店にお願いして手続きをすると、Microsoft 365管理センターにライセンスIDと「MAK(マルチライセンス認証キー)」というものが納品されます。このキーを使って、各PCで設定を行っていく流れですね。
※購入方法の詳細や具体的な見積もりについては、お付き合いのある販売代理店にご確認くださいね。
個人向けesuとの決定的な違い
最近、「個人向けのESUが1年延長されて、合計2年間使えるようになった!」というニュースを見た方もいるかもしれません。「それなら会社のPCも個人向けESUでいけるのでは?」と期待してしまいますよね。
でも、結論から言うと法人デバイスに個人向けESUを流用することはできません。
会社のネットワーク(Active Directory)に参加しているPCや、MDM(モバイルデバイス管理)で管理されているPCなどは、技術的に個人向けESUの登録画面が出てこないようになっています。
「バレないだろう」と無理やり個人向けESUを適用させようとするのは、コンプライアンス(法令遵守)や情報漏洩のリスク観点から絶対にやめるべきです。法人は正規の法人向けESUを購入するか、速やかにWindows 11へ移行するかの2択になります。
windows10のesuは法人にとって最適解か

ここまでESUの仕組みやコストについて見てきましたが、後半は「では、実際にESUを導入して運用していくのは現実的なのか?」という視点でお話ししていきます。情シス担当者としては、ここからが腕の見せ所ですね。
適用に必要なアクティベーション手順
ESUは「買ったら勝手にアップデートが降ってくる」わけではありません。管理者側で各PCに対して有効化(アクティベーション)の作業を行う必要があります。
具体的には、コマンドプロンプトを使って「slmgr.vbs」というコマンドを実行し、購入したMAKキーをインストールします。その後、年度ごとに割り当てられた「Activation ID」を指定して認証を通す、という手順です。
ネットに繋がっているPCならコマンド数行で終わりますが、工場などのインターネットに繋がっていない(オフライン)PCの場合は少し厄介です。電話で認証IDを取得して手動で打ち込んだり、VAMTという専用ツールを使って一括で代理認証したりと、かなり手間がかかる作業が発生します。
更新プログラム配信管理における罠
社内のPCをWSUS(Windows Server Update Services)やSCCMで一括管理している企業も多いと思いますが、ESUを導入する際は少し注意が必要です。
実は、WSUS側にはESUのパッチが自動的に同期されて表示されます。しかし、PC側のアクティベーション(前述のMAKキーの有効化など)が終わっていない状態でパッチを配信しても、インストール時にエラーになって弾かれてしまうんです。
「パッチを配信したのに適用されていない!」というトラブルを防ぐためにも、必ず全台のアクティベーションが完了したことを確認してから配信する、という順番を守る必要があります。また、SCCMを使ってアクティベーション作業自体を自動化するスクリプトを組むなど、運用面での工夫も求められます。
ハードウェア劣化による隠れたコスト
ESUのライセンス費用だけでもかなりの負担ですが、実は「古いPCを使い続けること」自体にも隠れたコストが潜んでいます。
Windows 10がプレインストールされていたPCは、すでに購入から数年が経過しているはずです。バッテリーがすぐ切れる、動作が重い、急にフリーズする…といったハードウェアの劣化による従業員の生産性低下は、目に見えにくいですが大きな損失です。
さらに、ESUではOSのバグ修正や新しい周辺機器のドライバ対応は提供されません。「新しいプリンターを買ったのにWindows 10で動かない」といったトラブル対応に、情シス部門の時間が奪われてしまう可能性も高いです。延命すればするほど、運用コストはじわじわと跳ね上がっていくと考えてください。
移行支援と補助金活用のすすめ
「やっぱりESUは高すぎるから、急いでWindows 11に移行しよう!」と決断した場合でも、台数が多いとPCのキッティング(初期設定)作業が地獄ですよね…。
そこでぜひ検討してほしいのが、「Windows Autopilot」や「Microsoft Intune」を活用したゼロタッチ展開です。PCをメーカーから直接従業員の自宅(テレワーク先)に送り、ネットに繋ぐだけで会社のセキュリティ設定やアプリが自動でインストールされる仕組みです。情シスが1台ずつ箱を開けて設定する手間が省けるので、圧倒的に楽になります。
また、費用の壁にぶつかっている場合は、「IT導入補助金」などの活用も視野に入れてみてください。条件を満たせば、PCの購入費用や移行ツールの導入費用に対して補助金が出るケースもあります。賢く制度を利用して、一気に環境をモダナイズ(最新化)してしまうのも手です。
・手作業でのキッティングを辞め、Autopilotなどを導入する
・IT導入補助金など、利用できる制度がないか調べる
・PC調達の納期遅れに備え、早め(夏頃まで)に発注を済ませる
windows10のesuと法人移行のまとめ
最後に、この記事のまとめです。
Windows 10のESUは、法人がセキュリティリスクを回避するための「公式な延命措置」ではありますが、毎年倍増するコストや、累積課金のルールを考えると、決して前向きなIT投資とは言えません。
「どうしても動かさなきゃいけない古い業務システムがある」「特別な機械の制御用PCだからOSを変えられない」といった、明確な理由がある一部のPCにのみ、最小限の台数でESUを適用するのが賢明な判断です。
それ以外の一般的な業務PCについては、ESUに支払う費用を、新しいWindows 11搭載PCの購入や、Intuneなどのクラウド管理ツールの導入費用に回す方が、結果的に会社の生産性もセキュリティも向上します。「ESUはあくまで一時的な時間稼ぎ」と割り切り、一日も早くWindows 11への移行計画を進めていきましょう!

