Windows 11のセットアップを進めていると、Microsoftアカウントでのサインインを求められ、以前のOSのように簡単にスキップできない状況に直面することがあります。新しいPCの初期セットアップで、何故必要かも分からないままアカウント作成に進むことに戸惑う方も少なくありません。特にローカルアカウントでの運用を希望する場合、この変更は大きな障壁となります。
従来の方法が使えなくなったという情報もあり、BypassNROといった特定のコマンドを使った回避策や、エクスペリエンスのロックを解除するための手順が模索されています。しかし、これらの方法にはメリットだけでなくデメリットも存在します。この記事では、windows11マイクロソフトアカウントスキップが困難になった背景から、最新のセットアップ手順、ローカルアカウントを作成するための他の回避策まで、網羅的に解説します。
- Windows 11でMicrosoftアカウントが推奨される理由
- ローカルアカウントで運用する利点と注意点
- セットアップ中にMicrosoftアカウントを回避する具体的なコマンド操作
- Windows 11 Pro版とHome版での手順の違いや代替策
windows11でマイクロソフトアカウントをスキップする背景

- MSアカウント登録が何故必要か
- Windows11セットアップの変更点
- ローカルアカウントとは何か
- ローカルアカウント運用のメリット
- ローカルアカウント運用のデメリット
MSアカウント登録が何故必要か
MicrosoftがWindows 11のセットアップにおいてアカウント登録を推奨する背景には、ユーザー体験の統合とサービスの連携強化という目的があります。Microsoftアカウントを通じて、OneDriveストレージへのアクセス、異なるデバイス間での設定同期、Microsoft Storeアプリの利用履歴管理などがシームレスに行えるようになります。
また、セキュリティ面でも、アカウントに紐づいた回復オプションやデバイスの追跡機能など、利便性の高い機能を提供しています。このように、OSを単なるローカルな動作環境としてではなく、クラウドサービスと連携したプラットフォームとして進化させようとする戦略が、アカウント登録を促す大きな理由と考えられます。
Windows11セットアップの変更点
Windows 10では、初期セットアップのネットワーク接続画面で「インターネットに接続していません」を選択することで、比較的容易にローカルアカウントの作成画面に進むことができました。しかし、Windows 11、特にHomeエディションでは仕様が変更され、多くの場合、初めからインターネット接続が必須とされています。
接続を確立すると、自動的にMicrosoftアカウントでのサインインまたは新規作成画面に誘導され、ローカルアカウントを作成する選択肢が標準のフローからは見えなくなっています。この変更により、従来の方法に慣れていたユーザーが戸惑うケースが増加しました。Proエディションでは一部異なる選択肢が残されていますが、Homeエディションでは回避策を知らない限り、ローカルアカウントでの運用開始が難しくなっています。
ローカルアカウントとは何か
ローカルアカウントとは、そのPC本体のみで利用が完結するユーザーアカウントのことです。アカウント情報や設定、ファイルなどは、インターネット上のサーバーではなく、使用しているPCのローカルストレージに保存されます。Microsoftアカウントのようにクラウドサービスと自動的に連携することはありません。
古くからのWindowsユーザーにとっては馴染み深い形態であり、インターネット接続が不安定な環境や、プライバシーの観点から個人情報を極力クラウドに紐づけたくない場合に選択されます。PCを単体でシンプルに使用したい場合に適したアカウント形式です。
ローカルアカウント運用のメリット
ローカルアカウントを選択する最大のメリットは、プライバシーの管理がしやすい点にあります。Microsoftのサーバーとのデータ同期が最小限に抑えられるため、アクティビティ履歴や個人設定が外部に送信されることへの懸念が減少します。
また、PCの起動やログインにインターネット接続を要求されないため、オフライン環境でもストレスなく使用可能です。さらに、Microsoftのサービス(OneDriveなど)の利用を強制されないため、不要な通知やストレージ容量の警告に悩まされることが少なくなります。シンプルなPC利用を求めるユーザーにとっては、管理しやすい点が魅力です。
ローカルアカウント運用のデメリット
一方で、ローカルアカウントにはいくつかのデメリットも存在します。最も大きな点は、デバイス間の設定同期機能が利用できないことです。複数のWindows PCを使用する場合、壁紙やパスワード、アプリの設定などを手動で個別に設定し直す必要があります。
また、Microsoft Storeからアプリをインストールする際に、結局Microsoftアカウントでのサインインを求められるケースがあります。さらに、万が一パスワードを忘れた場合、Microsoftアカウントのようにオンラインでの簡単なリセットができず、事前に作成したパスワードリセットディスクが必要になるなど、回復手順が煩雑になる可能性があります。BitLocker回復キーの自動バックアップといった便利なセキュリティ機能の一部も利用できません。
windows11マイクロソフトアカウントスキップの具体的手順

- Home版ではスキップできないのか
- BypassNROコマンドによる回避手順
- BypassNROが出来なくなった場合の対処法
- エクスペリエンスのロックを解除するコマンド
- Pro版や他の回避策について
Home版ではスキップできないのか
Windows 11 Homeエディションの標準インストールプロセスでは、前述の通り、Microsoftアカウントのスキップオプションが意図的に非表示にされています。そのため、画面の指示通りに進めるだけではローカルアカウントを作成することは困難です。
しかし、これはあくまで標準フロー上の制約であり、技術的な回避策が存在します。セットアップの特定のタイミングで特殊なコマンドを実行することにより、ネットワーク接続のチェックを回避し、隠されているローカルアカウント作成画面を呼び出すことが可能です。したがって、「標準ではできないが、裏技的な手順を踏めば可能」というのが現状の回答となります。
BypassNROコマンドによる回避手順
現在最も広く知られているローカルアカウント作成の回避策の一つが、「BypassNRO.cmd」というスクリプトを利用する方法です。これは、セットアップ中のネットワーク要件を一時的に無効化するコマンドです。
具体的な実行ステップ
- Windowsセットアップを開始し、「国または地域はこれでよろしいですか?」の画面、またはネットワーク接続を要求される画面まで進めます。
- キーボードの「Shift」キーと「F10」キーを同時に押して、コマンドプロンプトの黒い画面を表示させます。
- コマンドプロンプトに
oobe\BypassNRO.cmd
と入力し、Enterキーを押します。 - PCが自動的に再起動します。
- 再起動後、セットアップ手順を再度進めると、「ネットワークに接続しましょう」の画面に「インターネットに接続していません」という選択肢が表示されるようになります。
- これを選択し、続く画面で「制限された設定で続行」をクリックすると、ローカルアカウントの作成画面に進むことができます。
BypassNROが出来なくなった場合の対処法
Microsoftは、アップデートによってこのような回避策を無効化することがあります。実際に、将来のWindows Insider Previewビルドでは「BypassNRO.cmd」が削除されるとの報告もありました。もしBypassNRO.cmd
を実行してもエラーになるか、効果がない場合は、別の手段を試す必要があります。
一つの代替策として、レジストリを直接編集する方法があります。BypassNROコマンドが実行している内容を手動で行うイメージです。
レジストリ編集による回避手順
- 前述の手順と同様に、Shift + F10でコマンドプロンプトを開きます。
regedit
と入力してレジストリエディタを起動します。HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\OOBE
のパスを開きます。- 右側のペインで右クリックし、「新規」から「DWORD (32ビット) 値」を選択します。
- 値の名前を
BypassNRO
に変更し、その値を1
に設定します。 - レジストリエディタを閉じ、コマンドプロンプトで
shutdown /r /t 0
と入力してPCを再起動します。
これにより、BypassNROコマンドと同様の効果が得られる場合があります。
エクスペリエンスのロックを解除するコマンド
BypassNRO以外にも、ローカルアカウント作成を直接呼び出すコマンドが発見されています。これは「Microsoft エクスペリエンスのロックを解除する」画面、つまりMicrosoftアカウントのサインインを求められる画面で有効な場合があります。
localonlyコマンドの実行手順
- Microsoftアカウントのサインイン画面で、Shift + F10キーを押してコマンドプロンプトを起動します。
- コマンドプロンプトに
start ms-cxh:localonly
と入力し、Enterキーを押します。 - このコマンドが成功すると、ローカルアカウントのユーザー名とパスワードを設定する専用のダイアログが直接表示され、セットアップを続行できます。
この方法は、ネットワーク接続の状態に関わらず機能する可能性があり、BypassNROよりも手軽な代替策として注目されています。
Pro版や他の回避策について
Windows 11 Proエディションを使用している場合は、Homeエディションよりも簡単な公式ルートが残されています。また、その他の非公式な回避策も存在します。
Windows 11 Proの公式な方法
Pro版のセットアップでは、「このデバイスをどのように設定しますか?」という画面が表示されます。ここで「職場または学校用に設定する」を選択し、次の画面で「サインインオプション」をクリックします。すると「代わりにドメインに参加する」という選択肢が現れ、これを選ぶことでMicrosoftアカウントの入力を回避し、ローカルアカウントを作成できます。
ダミーアカウントによるエラー誘発
非公式な方法として、Microsoftアカウントの入力欄に意図的に存在しないメールアドレスを入力する方法があります。例えば、ユーザー名に a
、パスワードに b
といった無効な情報を入力したり、no@thankyou.com
のようなアドレス(ただし実在するドメインの使用は非推奨)を入力してエラーを発生させます。認証に失敗すると、場合によってはフォールバックとしてローカルアカウントの作成画面に移行することがあります。
サードパーティツールの利用
PCのセットアップに詳しい上級者であれば、「Rufus」のようなサードパーティ製のツールを利用する方法もあります。Rufusは、Windows 11のインストール用USBメディアを作成する際に、Microsoftアカウントの要件を削除したり、ローカルアカウントを自動作成したりするオプションを提供しています。
windows11マイクロソフトアカウントスキップ方法まとめ

- Windows 11のセットアップではMicrosoftアカウントでのサインインが強く推奨される
- Homeエディションではローカルアカウント作成の選択肢が標準フローから削除された
- ローカルアカウントはPC単体で完結しプライバシー管理がしやすい利点がある
- 一方でローカルアカウントはデバイス間同期や一部のStoreアプリ利用に制限が出る
- 回避策としてShift + F10でコマンドプロンプトを起動する方法が主流である
- BypassNROコマンド(oobe\BypassNRO.cmd)はネットワーク要件を回避する代表的な手段である
- コマンド実行後にPCが再起動し「インターネットに接続していません」が選択可能になる
- 将来のアップデートでBypassNROコマンドが使えなくなる可能性が指摘されている
- BypassNROが無効な場合はレジストリ編集で同様の効果を得られる可能性がある
- 代替コマンドとして
start ms-cxh:localonly
が有効な場合がある - ダミーのメールアドレスを入力して認証エラーを誘発する方法も存在する
- Windows 11 Pro版では「ドメインに参加する」オプションから正規にローカルアカウントを作成できる
- Rufusなどのツールを使ってインストールメディア側で対策することも可能である
- Microsoftは利便性向上を理由にアカウント統合を進めている
- ユーザー側は必要に応じて回避策を講じる状況が続いている